お久しぶりでございます。しばらく時間が空いてしまいました。皆様、健やかにお過ごしでしょうか。

2019年は韓国の話題が尽きない年でした。2020年はやはり話題に欠かない1年となる予感。東京オリンピックもありますしね!本当はもっと定期的に記事をアップしていきたいとは思っているのですが、なかなか叶わず随分と時が経ってしまいました。少しずつではありますが私が実際に財閥企業で経験した事例が、誰かの何かにお役に立てることを夢見てゆるりと綴っていこうと思いますので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、2月も半ばとなりました。そろそろ卒業式があり、新学期を迎える準備を始める時期ですね。日本は4月から新年度となりますが、韓国の新年度は3月からです。企業の新年度は1月からですが、新入社員の入社は1~3月の間のどこか、という感じでしょうか。卒業式の時期やタイミングを加味した上で企業によってそれぞれ入社日が異なる模様です。

新入社員と言えば「ああ、これで人不足から解放される!」とか「やっと後輩が入ってくる!「新人教育大変だー」など社会人の方はそれぞれ思うところあるのではないでしょうか。でもフレッシュマンのおかげで新しい風が吹き、社内の雰囲気がなんとなく変わるのはいいですよね。Xyz社も新入社員が入社するたびに「だれがかっこいい」とか「だれだれさんはどこどこ企業の社長の息子だ」などと噂が出るのですが、研修を終えて配属が決まる頃になると、不思議なことにフレッシュマンもすっかりXyz色に染まっている…。やっぱり軍隊のある国は団体教育がハンパナイと思ったものです。

ということで、今日は財閥企業の入社試験についてお話したいと思います。
韓国の財閥企業の大卒者の募集は桜が散ってアカシアが咲き始めるあたりから少しずつ始まります。募集要項の発表の仕方などは日本企業と大差なく、大学の就職課や会社のホームページ上に募集要項が掲載されるところからスタートです。合格までの流れはまずは書類、次に試験、そして面接を何度か行い、秋も深まりそろそろ雪かな?という頃に学生さんに合否が通知されます。Xyz社の場合、面接は3回度ありました。1回目は人事部の面接、2回目は実務担当者が入っての面接、最後が役員面接です。ここ最近の入社試験はどんどんと変わってきているのですが、Xyz社を例に韓国の財閥企業の入社試験についてお話したいと思います。

(1)書類審査
まずは履歴書と志望動機の書かれたエントリーシートの提出です。これは日本も同じですね。ただ、履歴書の中の「資格」の豪華さにおいては韓国の学生さんには驚かされるばかりです。

財閥企業に合格するような学生さんは、大抵語学は3か国語の能力試験で高得点を得、それぞれの職種で必要とされる諸資格をすでに取得しているケースが多々です。むしろ資格を取得していてはじめて自信を持って財閥企業の新卒採用に応募できるんだとか。驚くべきはいくつもの会社の入社試験を受けていて、それぞれの財閥企業が求めるような人材に対応すべく学生生活の4年間はすべて「就職」のために資格勉強、奉仕活動、留学経験などで「スペック」を作り上げているということに尽きます。

例として語学試験を見てみましょう。日本の場合、TOEICで850点取っていればかなり優秀な学生さんだ!と思いますよね。留学経験お有りなのね?と企業側の期待も高まるというものです。ちなみにTOEICとは英語のレベルを点数で測る試験で、990点が満点です。目安としては800点以上で英語で業務が可能と言われており、日本の企業でも海外勤務希望者や昇進の基準としてTOEIC800点以上を要求している場合が多いように思います。で、韓国の学生さんですが、私がXyz社の面接の時に見たエントリーシートのTOEICの欄で一番低い点数が880点でした。80%以上が900点以上。20%は950点以上だったように記憶しています。日本語はJLPTという「日本語能力試験」というものがあるのですが、N1(幅広い場面で使われる日本語を理解できる)やN2(日常的な場面で日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる)以外は履歴書に記入できるレベルではないと判断されているようでした。同じく中国語のHSKも日本語同様かなりの高レベルのみ記入可能とみなされているようで、最近は中国語は英語同様「基本」の外国語のようなふしがあります。

各外国語の試験についてはこちらのサイトをご覧下さい。

TOEIC:https://www.iibc-global.org/toeic.html
JLPT :https://www.jlpt.jp/

(2)試験
やはり基本はSPIです。そして各企業別に独自の試験を行う場合が多いようです。論述形式のものもありますし、純粋に学力を見るためのものもあります。
SPIに関する攻略本の数は日本の比ではありません。財閥企業の中でもサムスン電子や現代自動車の入社試験の倍率は尋常ではないため、語学試験の点数に不安があったり、思うように資格を取得できなかった学生さんはとにかくSPIで点数を稼ごうと必死です。

ところでOECDによりますと韓国の若者失業率は10.4%とのことです。一番左の赤が日本(3.8%)で韓国は青で表示されています。黒はOECD平均です。


youth unemployment
出:OECD Data

未来に不安を抱える若者達は少しでも長く働けて、少しでもつぶれる可能性のない企業に就職したいと考えます。となると、公務員か財閥企業を希望するしかないわけです。毎年サムスン電子の入社試験のニュースを驚きとともに拝見しておりますが、倍率が700倍とか800倍とかそれはもうありえない数字なんですね!またサムスン電子の入社試験は難しいことでも有名で、あんなに沢山の賢すぎる学生さんが入社して上司さんたちは大変じゃないんだろうかー(だって、自分より賢かったら困りますよね?)とこっそり思ったりもしました。試験までは割りとすんなり進みますが、ここでかなりの数がふるい落とされますので学生さんにとってはここががんばりどころです。

(3)面接
Xyz社の場合、一度目の面接は人事部が志望動機を確認しつつ、それぞれの人柄を確認するというものでした。最近は出身校を記入を要求しない企業が増えているとのことですが、おそらく人事部の面接の段階ではある程度把握しつつ面接しているように思います。
この出身校を記入しないというのは、特定の大学の出身者に有利な判定がなされないように配慮するためと言われています。日本で言うところのFラン以上の学校のことですが、韓国の場合トップレベルの大学の頭文字を取って「SKY(スカイ)」と言われています。Sはソウル大学、Kは高麗大学、Yは延世大学です。

二度目の面接では、新入社員の受け入れを希望している部のトップとの面接です。業務能力を確認する目的のための面接となり、Xyz社ではこの時に語学レベルのチェックも兼ねて行われておりました。第二面接は約5名の合同面接で、面接官が時事問題を韓国語で質問します。例えばAさんに「Brexitが韓国に与える影響についてどう思いますか?」と質問したとしましょう。それに対してAさんは韓国語でご自身の考えを述べるわけですが、Aさんの答えを聞いた面接官は学生Cさんに「CさんはAさんの意見についてどう思いますか?」と尋ねます。それなら学生さんもなんとか答えられますよね?でも面接官は「あなたの第二外国語はロシア語ですね?ではご自身の意見をロシア語でご回答下さい。」となるわけです。面接官はだいたいそこにいる自社スタッフがどの外国語を使えるかを認識しているので、その場にいるXyz社のスタッフが判断できないような言語は選ばれることがありません。この面接でかなり候補者が絞られます。

最後は役員面接です。これは私も同席したことがないのでよくわからないのですが、聞くところによりますと家庭環境を確認したり、社風に合うかどうかなどをチェックしているとのことでした。例えば、お父様がライバル会社の役員とかだったりすると不利になりますし、おそらく関連会社の御子息だったりすると暗黙の了解で有利に事が運んだりするんだろうなーと思います。(実際そういう人、何人もいましたし。)ちなみにコネ入社のことを韓国では「落下傘」といいます。

(3)合否
これも日本同様、人事部より合格した学生さんに指定の日付に電話で連絡する場合が多いようです。今の韓国は思いっきり買い手市場で、名門ソウル大学を卒業した学生さんですら職につけないといいます。公務員試験の倍率が40倍近いと言われており、意図的に休学して試験に備える人も多くいます。ですので学生さんも何社も応募している状態ですから、実際に入社につながるのは内定の人数を下回ります。Xyz社の場合、財閥とは言え小ぶりの会社でしたので、実際に入社する方は50~60%くらいでした。

個人的に一つおもしろいと思う点をご紹介したいと思います。韓国の入社試験の特徴として年齢層の幅があげられると思います。男子学生は入隊義務があるため、約2年休学して軍隊に入ります。ですので4年制大学を卒業する際の年齢が24歳です。さらに語学留学などする場合もありますし、さらには現役での就職活動がうまくいかず修士課程・博士課程からの新入社員の募集に応募してくる場合もありますので、「新卒」の年齢幅が22歳~30歳程度と非常に幅広いのです。また昨今は海外の大学を出た方が帰国して韓国企業での活躍を求める場合が多く、6月の卒業のタイミングで試験に間に合わなかったので卒業から数か月おいての試験という方も多くいらっしゃいます。30歳といえば、日本ではすでに8年の就労経験があるわけですから、新卒で30代というのはかなり驚きました。同期が10歳年上なんてこともある韓国のフレッシュマン。希望を胸にがんばって欲しいですね。

それでは今日はここまで!ご一読ありがとうございました。